KAITO a.k.a HIROSHI WATANABE

(Transmat | Kompakt)

ドイツ最大のエレクトロニック・レーベル〈Kompakt〉よりKAITO名義の作品を発表する傍ら、ギリシャの〈Klik Records〉からも作品をリリースしている。2002年に制作したKAITOの1stアルバム「Special Life」に収録された「Intension」がFrancois K.のミックスCDに収録されるなど瞬く間に大反響を呼び、10年以上が経過した現在も色褪せることのない名曲として語り継がれている。その後、〈Kompakt〉のコンピレーション・アルバムにも収録された表題曲を含む2ndアルバム「Hundred Million Light Years」を発表。この2枚のアルバムで一躍KAITOの名は世界中に浸透し、バルセロナのSónar Festivalなどのビッグイベントでライヴを披露した。
KAITO名義のオリジナルアルバムでは常に対になるビートレス・アルバムも制作され、繊細かつ美しい旋律により幅広い音楽ファンに受け入れられている。3rdアルバム「Trust」に対しての「Trust Less」では更にアコースティックな要素も取り入れ、リスニング機能をより高めた作品となった。
本名のHIROSHI WATANABE名義では自身最大のセールスを記録した1stアルバム「Genesis」に続き、2011年に「Sync Positive」を発表。タイトルが示す通り、リスナーを鼓舞させる渾身の作品となっている。またリミックスを機に交流を深めてきた曽我部恵一との異色コラボレーション・アルバム「Life, Love」ではメランコリックな音像と歌声が溶け合った叙情的なサウンドで新境地を切り拓いている。

一方、ダウンテンポ・プロジェクトTREADでは、シンプルで柔らかい上音と乾いたビートの融合を絶妙のバランスで確立し、ハウス/テクノ/ヒップホップなどジャンルの壁を越えて多方面から注目を浴びることに。限定生産された5枚のアルバムと4枚のEPは不変の価値を持つ名盤として知られている。2013年には〈Kompakt〉設立20周年を記念して制作された2枚組DJミックス「Recontact」を、更にKAITO名義としては4年振りとなるアルバム「Until the End of Time」を発表。新生KAITOとも言える壮大なサウンドスケープが描かれている。

2016年初頭にはテクノ史に偉大な軌跡を刻んできたデトロイトのレーベル〈Transmat〉よりEP「Multiverse」をリリース。主宰Derrick Mayの審美眼により極端に純度の高い楽曲のみがナンバリングされるため、近年はリリースそのものが限定的となっている中での出来事。EPと同名のアルバムは、さながら宇宙に燦然と煌めく銀河のようなサウンドが躍動する作品となっている。歴史を創出してきた数多のレーベルを拠点に世界中へ作品を届け続けるHIROSHI WATANABE。日本人として前人未到の地へ歩みを進める稀代の音楽家と言えるだろう。