FRANCESCO TRISTANO

常に新しい自身のテクノを追い求めながら、クラシックのピアニストとしても確固たるキャリアを築き上げてきたトップアーティスト、Francesco Tristano。

1981年にルクセンブルクで生まれ、1998年にニューヨークのジュリアード音楽院に入学して修士学位を取得。2004年には2年に1度、フランスで開かれる現代音楽のコンクールオルレアン20世紀音楽国際ピアノコンクールで優勝を果たす。その後、アメリカ留学時に出会ったテクノに衝撃を受け電子音楽にも傾倒。2007年にフランスの〈Infiné〉から発表したアルバム「Not for piano」では、自身のオリジナル楽曲とともにJeff Millsの「The Bells」やDerrick Mayの「Strings of Life」などのデトロイトアンセムのピアノバージョンを収録。この作品がクラシックミュージック界を超えて世界中へと広まった。翌年の作品「Auricle Bio On」ではピアノのサウンドと同時にサンプラーとシンセサイザーの音を取り入れ、2010年の「Idiosynkrasia」では「Piano 2.0」と自ら名付けたデジタルの妙技とエレクトロニックなテクスチャを融合させることに成功した。2015年にはドイツの〈Get Physical Music〉よりDJミックス「Body Language Vol. XVI」をリリース。2016年には「Strings of Life」で邂逅したDerrick Mayの〈Transmat〉からアルバム「Surface Tension」を発表。さらに2018年にはCarl Craigとの共作をリリースするなど、デトロイトテクノと密接に結びつき、エレクトロニックミュージック界においても確固たるポジションを築いた。また、坂本龍一のキュレーションのもと開催されたリサイタル「Glenn Gould Gathering」でピアニストとして招かれ、国内でも大きな話題となった。

親日家としても知られ、幾度となく東京から得たインスピレーションで産まれたアルバム「Tokyo Stories」には、〈Transmat〉のレーベルメイトでもあるHiroshi Watanabeとの共作も収録されている。電子音楽家としてのキャリアを築きながらも、バッハ以前のバロックスタイルと20〜21世紀の間にあるようなレパートリーを持つクラシック音楽のピアニストとして、テクノとクラシックの間にある旋律を追い求める不世出のアーティストといえるだろう。